ヘルスケア分野では、問い合わせ対応や問診を支援する手段として、AIチャットボットが活用されています。
効率化が実現されている一方で、健康や医療に関する情報に誤りがあれば、利用者に影響を与えるリスクがあります。また、個人情報の取り扱いにも慎重な対応が必要です。
そこでこの記事では、AIチャットボットの導入を検討している方に向けて、以下の内容を解説します。
この記事で分かること
- ヘルスケア向けAIチャットボットの概要
- 各社が提供するサービスの比較
- 導入時のメリットと知っておくべきリスク
- 安全に運用するための運用手順
どうすればリスクを最小限に抑えられるかも解説しているので、AIチャットボットの導入で失敗したくない方は、ぜひ最後までお読みください。
ヘルスケア向けAIチャットボットとは?

ヘルスケア分野におけるAIチャットボットとは、AIを活用し、患者や利用者からの質問に自動で回答するシステムを指します。
医療機関やヘルスケアサービスの分野においては、受診方法や診療時間などの問い合わせをはじめ、健康に関する情報提供や、各種手続きのサポートなどにも活用可能です。
これにより、利用者はAIが適切に案内してくれることで、スムーズに知りたい情報を得ることができます。
また、医療機関やサービス提供者にとっては、繰り返し寄せられる問い合わせへの対応をAIに任せられるため、スタッフの負担軽減につなげられるのがメリットです。
ヘルスケアにおけるAIチャットボットの主な活用事例
利用者はもちろん、サービス提供者にもよい影響を与えられるのが、AIチャットボットを導入する利点です。しかし、自社でどのように活用できるかのイメージが湧かない方もいるのではないでしょうか。
そこでここでは、AIチャットボットの活用例を紹介します。
患者の受付や予約スケジュール管理の自動化
医療機関では、診療時間や予約方法に関する電話対応が、受付スタッフの負担になっているケースもあるのではないでしょうか。
AIチャットボットを活用すると、予約受付や空き枠の案内、予約日時の変更・キャンセルといった手続きを自動化できます。
患者は診療時間外でもWebから手続きができるため、都合のよいタイミングで予約を調整できるのが利点です。また、予約日時のリマインド通知や、キャンセル発生時の案内などにも活用できます。
こうした業務を自動化することで、電話対応といった負担を軽減し、ほかの業務に取り組みやすくなります。
症状チェックと適切な診療科への案内
患者によっては、体調に異変を感じたときに、どの診療科を受診すればよいかわからずに悩むことがあります。
AIチャットボットを導入することで、患者の症状や体調に関する情報をもとに、受診先となる診療科の案内が可能です。たとえば、症状の種類や程度、いつから続いているかなどを入力してもらい、それに応じて診療科を提示するといったイメージです。
患者が受診先を判断する際の手助けになるほか、医療機関側にとっても、症状と診療科が合わないことによる問い合わせや受診先の変更を減らすことにつながります。
服薬状況や健康状態のヒアリング
患者の服薬状況や日々の健康状態を確認する際、AIチャットボットが役立ちます。
慢性疾患のある患者の治療や健康管理において、薬を適切に服用できているか、体調に変化がないかの把握は欠かせません。しかし、患者一人ひとりの状況を常に把握するには、医療機関側にも一定の負担がかかります。
そこで、AIチャットボットから定期的にいくつかの質問を送り、患者に入力してもらうのです。薬の飲み忘れや普段と異なる体調の変化を把握する際に役立ちます。
スタッフに負荷を与えることなく患者の体調を把握できるので、無理のない管理体制をつくれます。
診療後の不安や疑問への回答
AIチャットボットは、患者が帰宅後に感じた疑問への回答にも活用できます。
たとえば、「処方された薬は何時間空けて服用すればよいか」「処置後はいつから入浴できるか」といった質問です。帰宅してから浮かんだ疑問に電話で対応するには、医師はもちろん受付スタッフにも負担をかけることになります。
こうした定性的な質問をAIチャットボットに登録しておけば、必要情報を患者にスムーズに案内することが可能です。
患者の不安や疑問は知りたいタイミングで解消されるため、医療機関への問い合わせ対応の負担軽減にもつながります。
メンタルヘルス支援の提供
ストレスや心の不調を抱える人へのサポートに、AIチャットボットは活用できます。
メンタルヘルスに関する悩みは、家族や友人、職場の人など、自分を知っている相手だからこそ話しにくいケースがあります。「どう思われるだろう」「心配をかけたくない」という気持ちから、相談をためらうこともあるでしょう。
AIチャットボットであれば、相手の表情や反応を気にせず、自分の気持ちや悩みを入力できます。その情報から、セルフケアに関する情報を提供したり、必要に応じて相談窓口や医療機関を案内したりすることが可能です。
人には言いにくい悩みを抱える人が、自分の状態と向き合ったり、支援が必要なことに気づいたりするきっかけをつくれます。
ヘルスケア向け国内AIチャットボット4社の比較

ヘルスケア向けAIチャットボットを選ぶ際は、患者向けか職員向けかだけでなく、医療情報を扱うかの確認も必要です。
ここでは、4社のツールの機能や用途をそれぞれ紹介するので、どのようなサービスが適切かをチェックしてみてください。
症状検索エンジン「Ubie」
「ユビー」は、Ubie株式会社が提供する、生活者と医療機関の双方を支援するサービスです。
生活者向けの「症状検索エンジン ユビー」では、スマートフォンやPCから症状に関する質問に答えると、関連する病名や医療情報、適切な診療科などを確認できます。診断するのではなく、受診を検討する際の情報を提供しています。
また、「ユビーAI問診」は、医療機関向けの提供です。患者が診察前に症状や病歴などを入力すると、回答内容に応じてAIが質問を最適化します。問診内容を事前に整理することで、患者からの伝え漏れを減らすとともに、医療従事者の問診や事務作業の効率化を支援するのが特徴です。
受診前から患者をサポートしたい、問診業務の効率化によって現場の負担を減らしたいといった、医療機関に向いているといえます。
予約・受付業務を支援する「AIさくらさん」
「クリニックさくらさん」は、株式会社ティファナ・ドットコムが提供する、医療機関向けのAI受付サービスです。
患者からの電話にAIが対応し、予約の登録や変更・キャンセルまで自動化できます。既存の電話番号や電子カルテ、予約システムと連携できるため、現在の運用を大きく変えることなく導入できるのが利点です。
また、患者ごとの過去のやり取りを参照した案内ができ、受付スタッフがカルテを確認しながら応対する手間をなくせることを期待できます。
「クリニックさくらさん」は、予約や問い合わせの電話が多く、受付スタッフの業務負担を軽減したいクリニックに向いています。
患者からの問い合わせに対応する「受診ボット」
「受診ボット」は、株式会社ドクターブリッジが提供する、クリニック専用のAIチャットボットです。
クリニックのWebサイトに設置することで、診療時間や初診時の持ち物、検査前の注意事項など、患者から寄せられるよくある質問に24時間365日自動で回答してくれます。院ごとの情報を登録して回答内容を調整できるほか、検査などの関連ページへ案内することも可能です。
なお、患者対応だけでなく、院内マニュアルや業務手順を確認するスタッフ向けの情報検索ツールとしても活用できます。
定型的な問い合わせが多く、患者対応の負担を減らしながら必要な情報へスムーズに案内したいクリニックは検討してみてください。
診療科ごとの問い合わせには「NOMOCa-AI chat」
「NOMOCa-AI chat」は、株式会社GENOVAが提供する、クリニック業界でもっとも導入されているAIチャットボットです。(※2025年時点)
Webサイトに設置することで、診療時間や予約方法、駐車場など、患者から寄せられる問い合わせに24時間365日対応します。また、院ごとのFAQや診療案内を設定できるのが特徴で、以下のような診療科ごとの専門的な内容にも対応可能です。
- 内科:発熱時の受診方法
- 歯科:インプラントの治療費用や流れ
- 美容皮膚科:施術前の注意事項 など
こうした問い合わせをAIに任せることで、患者を待たせることなくスムーズに案内し、クリニックで働く従業員の負担軽減にも役立ちます。
AIチャットボットを導入する3つのメリット

医療機関やヘルスケア企業がAIチャットボットを導入することは、サービスの提供側だけでなく、それを利用する患者側の双方に大きなメリットをもたらします。
ここでは、導入によって得られる代表的な3つの利点を整理して解説します。
24時間365日対応できる安心感
夜間や休日といった医療機関の受付時間外に体調が急変したり事故が起きたりした場合、本人や家族は不安な気持ちを抱えることになるでしょう。そうしたときに、AIチャットボットを通じて対応方法や受診先情報を確認できれば、どう行動すればよいかを判断する助けになります。
救急安心センター事業(#7119)や子ども医療電話相談事業(#8000)といった電話相談窓口もありますが、時間帯によってはすぐにつながらないケースがあるのが現状です。
AIチャットボットであれば、あらかじめ登録された情報をもとに、時間帯を問わず患者からの質問に対応できます。
どうしたらいいか困っている患者の不安や焦りを軽減させる効果だけでなく、医療機関側も問い合わせ対応の負担軽減が期待できます。
参考:もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの? | 政府広報オンライン
本音を相談しやすい匿名性
対面や電話では相談しにくいデリケートな悩みを打ち明ける際に、AIチャットボットが活躍します。
メンタルヘルスの不調や性感染症、生殖器に関する症状などは、医療従事者であっても、相談をためらってしまう人もいます。
AIチャットボットであれば、相手の表情や反応を気にする必要がないので、心理的なハードルが下がることが期待できます。また、匿名で利用できる仕組みであれば、より効果を見込めるでしょう。
人には言いにくい悩みを相談できる環境を整えることで、自分の状態を見直したり、必要に応じて医療機関や相談窓口の利用を検討したりするきっかけにつなげられるのが利点です。
医療現場の業務負担軽減とコスト削減効果
AIチャットボットを導入することで、医療機関における問い合わせ対応の負担を軽減できます。
診療時間や予約方法、受診時の持ち物など、患者から繰り返し寄せられる質問にその都度対応していると、スタッフの時間を取られます。
こうした定型的な問い合わせをAIチャットボットで自動化すれば、電話や窓口で対応する件数を減らすことが可能です。ほかの業務への時間を確保しやすくなるだけでなく、人件費をはじめとした運営コストの負担軽減も期待できます。
限られた人数で効率的に業務を進めるためにも、AIに任せられることとそうでないことを切り分けることが大切です。
導入前に知っておくべきリスクと注意点

ヘルスケア領域でAIチャットボットを活用する際は、誤情報や個人情報の取り扱いといったリスクに注意を払うことが必要です。
特に医療や健康に関する情報は、利用者の安全やプライバシーに関わります。導入前に想定されるリスクを把握し、必要な対策や運用ルールを整えておきましょう。
AIによる誤情報拡散の可能性
AIチャットボットは、必ずしも正確な情報だけを回答するとは限りません。
生成AIは、事実とは異なっていても、あたかもそれが正解かのように回答してくることがあります。医療や健康に関する場面で誤った情報を案内してしまえば、利用者が不適切な行動を取る可能性があるのです。
そのため、リスクを避けるためにも、AIに回答させる範囲をあらかじめ決めたうえで、回答内容を定期的に確認するなどして、体制を整える必要があります。
また、診断や治療方針の判断などは、医療従事者による対応が欠かせません。重要な問い合わせに対しては、AIだけで完結させない仕組みを整えておきましょう。
健康データのプライバシー漏洩懸念
AIチャットボットで患者の健康情報を扱う場合は、個人情報の管理に十分な注意が必要です。
病歴や診療内容、身体の状態などに関する情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当します。そのため、一般的な問い合わせ情報以上に慎重な取り扱いが求められます。
そのため、導入するサービスを選ぶ際は、入力した情報の取り扱いについて、以下の項目を確認しておきましょう。
- どのように保存・利用されるか
- AIの学習に使われる可能性があるか
- 第三者へ提供されることがないか
医療情報を安全に管理できる仕組みが整っているかを観点に、利用者も提供者も安心して使えるかを確認することが重要です。
緊急性の高い症状には未対応の限界
AIチャットボットだけでは、緊急性の高い症状には対応できないケースがあります。
たとえば、以下のような症状です。
- 激しい胸の痛み
- 呼吸困難
- 意識障害
- 大量の出血 など
こうした場合には、迅速な医療機関への受診や救急要請が必要となります。
緊急性の高い問い合わせには、救急相談窓口や医療機関などへ案内できる導線を整えておくことが重要です。
AIはあくまで利用者への案内や情報提供を支援するツールのひとつとして活用し、必要な場面では人的対応へ切り替えられる体制を整えておきましょう。
導入失敗を避けるための具体的な3つの運用手順

医療現場にAIチャットボットを導入する際は、システムを設置するだけでなく、利用目的や安全性を踏まえた運用設計が必要です。
特に健康や医療に関する情報を扱う場合は、AIに任せる範囲や個人情報の管理方法、人による対応へ切り替える条件などを事前に決めておきましょう。
導入時に確認したい主な手順は、以下の3つです。
- 利用目的とAIが対応する範囲を決める
- 安全に利用できるプラットフォームを選ぶ
- 人による対応へ切り替える導線を整える
それぞれ詳しく解説します。
利用目的とAIが対応する範囲を決める
AIチャットボットを何のために導入するのかを明確にします。
診療時間や予約方法などの問い合わせ対応を自動化する場合と、患者から症状を聞き取る場合とでは、必要な機能や注意すべきリスクが異なります。
そのため、「どの質問までAIが回答するのか」「どのような内容は医療従事者へ引き継ぐのか」など、対応範囲をあらかじめ決めておくことが重要です。
医療や健康に関する内容を回答させる場合は、医師や看護師などの知見も取り入れながら、案内する情報や回答ルールを確認しておきましょう。
安全に利用できるプラットフォームを選ぶ
利用目的を明確にしたら、AIチャットボットを選定します。
医療機関が扱う情報には、病歴や症状などの機微な個人情報が含まれます。そのため、機能や料金だけでなく、安全に利用できるかを確認することが欠かせません。
サービスを比較する際は、以下の項目は忘れずに確認しておきましょう。
- 入力したデータがどのように保存・利用されるか
- 入力データがAIの学習に利用されるか
- 通信や保存データの安全性が確保されているか
- 利用者ごとのアクセス権限を設定できるか
- 操作やアクセスの履歴を確認できるか
なお、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、ヘルスケア分野における安全性基準を確認できます。適したサービスを選ぶためにも、目を通しておいてください。
不確実な症状は「医師の診察」へ繋ぐ導線を整える
AIチャットボットだけでは対応できない質問や症状を想定し、人による対応へ切り替える導線を事前に整えておきましょう。
たとえば、診療時間や予約方法などの一般的な問い合わせはAIで対応する一方、個別の診断や治療方針に関する質問などは、医師をはじめとした医療従事者へ相談するよう案内するといったルールが考えられます。
また、緊急性が疑われる内容については、AIとのやり取りだけで完結させず、救急相談窓口や医療機関など適切な相談先を案内できる仕組みを整えておくことも重要です。
AIと人が対応する範囲をあらかじめ分けておくことで、業務効率化を実現しながら、安全性にも配慮した運用につなげられます。
事例とリスクを比較検討し最適なAIチャットボット導入を
ヘルスケア領域におけるAIチャットボットは、受付業務の効率化や患者の利便性向上など、さまざまな場面で役立ちます。
一方で、医療や健康に関する情報を扱う以上、誤情報や個人情報の取り扱いなどにも注意が必要です。
本記事で解説したポイントを、以下に整理します。
- 予約受付や問い合わせ対応など、定型業務の自動化に活用できる
- 時間帯を問わない情報提供や相談しやすさから、患者の利便性向上が期待できる
- 導入目的や利用者に合わせて、必要な機能を備えたツールを選ぶ
- 入力データの取り扱いやアクセス権限など、セキュリティ面を確認する
- 必要に応じて医療従事者や相談窓口へつなぐ導線も整える
AIチャットボットを導入する際は、どのように活用したいのかを明確にしたうえで、安全性や運用方法まで含めて比較検討することが大切です。
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