住民からの問い合わせ対応や、窓口業務の負担を軽減する手段として、自治体でチャットボットの活用が進んでいます。
総務省の調査(自治体におけるAI・RPA活用促進)によれば、2024年12月時点でAI・RPAを導入済みの自治体は都道府県・指定都市が100%、その他の市区町村でも58%に達しています。実証中や導入予定を含めると、市区町村の約76%がAIの導入に向けた取り組みを進めている状況です。
しかし、「どのような用途で使えるのか」「費用はどれくらいかかるのか」「総務省が推進しているGovbotとは何が違うのか」といった疑問点があるのではないでしょうか。
この記事では、自治体向けチャットボットについて、以下の内容を解説します。
- 自治体チャットボットの仕組みと活用用途
- 導入によるメリットと注意点
- 自治体の実例に基づく導入費用の目安
- 総務省が提供する「Govbot」との違い
- 実際の導入事例と導入までの具体的なステップ
導入を検討している行政担当者の方はもちろん、これから情報収集を始める方にも参考になる内容なので、ぜひ最後までお読みください。
自治体向けチャットボットとは?

自治体向けチャットボットとは、住民からの問い合わせに自動で応答するシステムのことです。Webサイト上のチャット欄に質問を入力すると、あらかじめ用意された回答や、AIが生成した回答が表示される仕組みになっています。
自治体向けチャットボットの特徴は、幅広い行政分野の問い合わせを扱うことです。以下のような多岐にわたる問い合わせに対応する必要があります。
▼自治体によく寄せられる問い合わせ
- ごみの分別方法
- 子育て支援制度
- 税金の手続き
- 災害時の避難情報
窓口の電話がつながりにくい、職員が同じ質問に何度も対応しなければならないといった課題を解決する手段として、チャットボットを活用できます。
チャットボットの仕組みと種類
自治体向けチャットボットには、大きく3つのタイプがあります。
- シナリオ型:住民があらかじめ用意された選択肢を選び、目的の情報にたどり着く仕組み。案内する内容を管理しやすい一方、想定していない質問には対応できない。
- AI型:住民が自由に入力した文章の意図をAIが読み取り、登録された回答から適切なものを選ぶタイプ。「ごみ」と「ゴミ」といった表記のゆれにも対応し、質問の表現が異なっていても関連回答を探せる。
- 生成AI型:ChatGPTなどで使われる大規模言語モデルを活用し、質問に応じた文章を生成。自治体独自の条例やFAQ、手続きの文書を検索し、回答に反映する仕組みもある。
対応できる質問の幅や導入のしやすさは異なるため、どの型を選ぶかはしっかりと検討しておくことが重要です。
なお、チャットボットとAIの違いについてを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
チャットボットとAIの違いを解説!失敗しない選び方とおすすめ
自治体でチャットボット導入が進む背景
自治体でチャットボットの導入が進んでいる背景には、主に3つの要因があります。
▼チャットボット導入が進む要因
- 職員数が不足している
- 住民からのサービス向上が求められている
- 国がDX化を推進している
限られた人員で住民対応を担う自治体では、定型的な問い合わせが職員の負担となっています。チャットボットで対応を自動化できれば、職員は専門性の高い業務に時間を割けるようになるのが利点です。
また、窓口が開いている時間に問い合わせられない住民のために、夜間や休日にも質問できる手段が求められています。
さらに、国によるDXの推進も導入への背景としてあげられます。総務省は自治体のAI活用に関する調査結果(自治体におけるAI・RPA活用促進)を公開しているのです。こうした情報を参考に、導入を検討する自治体が増加しています。
自治体チャットボットの主な活用用途6つ

自治体向けチャットボットは、住民向けの問い合わせ対応だけでなく、庁内の業務効率化まで幅広い場面で活用されています。ここでは代表的な6つの用途を紹介します。
住民からの問い合わせを24時間自動で受け付ける
最も基本的な用途が、住民からの定型的な問い合わせへの対応です。転入・転出の手続き方法、ごみの分別ルール、各種証明書の発行手順など、多くの住民が共通して知りたい情報をチャットボットが自動で回答します。
窓口の開庁時間外や土日でも対応できる点が大きな利点です。日中に時間が取れない働く世代の住民にとって、夜間に夜間に必要な情報を確認できます。
行政手続き・イベント情報の案内
確定申告の期間や予防接種の案内、地域のお祭りやイベント情報など、時期に応じて変化する情報の案内にもチャットボットは活用されています。
窓口へ出向く前に必要な情報を確認できるのが特徴です。質問に応じて関連情報へ案内することで、住民がホームページ内を探し回る手間を減らせます。
多言語対応・インバウンド・外国人住民支援
在留外国人や訪日観光客の増加に伴い、多言語対応を備えたチャットボットを導入する自治体も増えています。実際に、東京都渋谷区では生成AIを活用したチャットボットを公式ポータルサイトに設置しています。行政手続きや制度に関する問い合わせに応答する仕組みです。
観光案内のニーズが高い地域では、外国人住民だけでなく訪日観光客向けの情報提供としても活用されています。必要とされる言語に対応することで、日本語に不慣れな方にも情報を届けやすくなります。
災害時の緊急情報提供
地震や大雨などの災害発生時には、避難所の開設状況や被災者支援制度に関する問い合わせが集中することがあります。最新の情報を反映できる仕組みを整えれば、チャットボットを一次案内の窓口として活用することが可能です。
平常時は住民サービスの窓口として、災害時は緊急情報の発信手段として、用途を切り替えられる点も自治体向けチャットボットの強みです。
庁内ナレッジの共有・職員の調べ物を効率化する
チャットボットの活用は、住民向けだけにとどまりません。庁内向けに導入し、職員が業務マニュアルや過去の対応事例を検索する手段としても活用できます。
新しく配属された職員が自分で答えを探せる環境は、引き継ぎや質問対応の負担軽減につながります。ただし、扱う情報の機密性に応じたセキュリティ要件の確認が必要です。
LINE連携で住民との接点をさらに広げる
自治体の公式LINEアカウントとチャットボットを連携させる取り組みも進んでいます。ごみの分別や窓口の混雑状況、子育て支援制度など、住民からよく寄せられる質問の案内に活用することが可能です。
日常的に使うツールを入り口にすることで、チャットボットの利用機会を増やす工夫の1つです。
自治体がチャットボットを導入するメリット3選

ここまで活用用途を紹介してきましたが、実際に導入することで自治体側にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのポイントに絞って解説します。
住民の利便性向上・満足度アップ
役所の窓口は平日の日中しか開いていないことが多く、仕事をしている住民にとっては「聞きたいことがあっても確認するタイミングがない」という状況が珍しくありません。そのため、住民の知りたいタイミングで問い合わせできる状況は、満足度向上につながります。
夜間や休日であっても、住民の生活実態に合わせられるのが大きなメリットです。
職員の問い合わせ対応負担を削減できる
自治体に寄せられる問い合わせには、同じ内容の質問が繰り返されているケースが多くあります。「ごみの日はいつか」「住民票はどこで取れるか」といった定型的な質問も、職員が毎回説明すると負担が積み重なります。
こうした定型対応をチャットボットに任せることで、職員は複雑な相談対応や専門性の求められる業務に時間を使えるようになります。
窓口・電話対応コストの削減につながる
人による電話・窓口対応には、当然ながら人件費がかかります。1件あたりの対応時間が数分であっても、年間の問い合わせ件数が数万件規模になる自治体では、その積み重ねが大きなコストになっているケースも少なくありません。
定型的な問い合わせを移行し、対応コストの削減を期待できることがチャットボットのメリットです。ただし、導入には初期費用や運用費用もかかるため、削減できる業務量とあわせて検討する必要があります。
自治体チャットボット導入前に知っておきたい注意点

チャットボットの導入には、データ整備や運用体制の準備も必要です。事前に注意点を把握し、導入後のミスマッチを防ぎましょう。
初期設定・FAQ整備に工数がかかる
チャットボットは、導入するだけで必要な情報を正確に回答できるわけではありません。登録済みの回答を使う方式では、住民からよく聞かれる質問と回答を整理する作業が必要です。生成AI型でも、回答のもとになる文書を整え、内容を確認する必要があります。
特に、過去にFAQをまとめたことがない自治体では、初期整備に想定以上の時間がかかることがあります。複数の部署が関わる質問は、回答内容を確認する担当部署の調整も必要です。
導入後も制度の変更や新しい質問に合わせて更新するため、運用担当者を事前に決めておきましょう。
精度が低いと住民の不信感につながる
AI型や生成AI型のチャットボットは、シナリオ型に比べて柔軟な回答ができる一方、誤った回答をしてしまうリスクもゼロではありません。東京都渋谷区の生成AIチャットボットでも、誤った回答をする場合があるとして、表示されたリンク先で正確性を確かめるよう案内されています。
住民が間違った情報を信じて手続きを進めてしまうと、後から訂正する手間がかえって増えてしまいます。回答の精度を保つには、定期的な設定の調整や内容の点検が欠かせません。費用を比較する際も、回答データの整備や運用中の確認に必要な作業を含めて検討しましょう。
利用するネットワーク環境によって対応要件が異なる
職員向けにチャットボットを導入する場合、扱う情報や接続するネットワークの種類によって必要な要件が変わってきます。
インターネット接続系と、行政専用ネットワークであるLGWANの接続系では、利用条件が異なります。また、個人情報や機密情報を入力するかどうかによっても、確認すべき項目が変わるため、先に環境を決めることが必要です。
なお、LGWAN接続系で利用する場合は、LGWAN-ASPへの対応状況や、自治体ごとに定められているセキュリティポリシーへの適合を確認しておく必要があります。導入を検討する段階で、情報システム部門に確認を取っておくとスムーズに進められるでしょう。
自治体チャットボットの導入費用の目安

チャットボットの導入を検討するうえで、気になるのが費用面ではないでしょうか。インターネットで検索すると、月額数千円から使えるチャットボットサービスの情報も見かけますが、これは主に一般企業向けの簡易なサービスの料金です。
自治体向けのチャットボットには、FAQの整備、Webサイト・LINEへの対応、職員研修、運用保守、セキュリティ要件への対応などが含まれることが多く、一般企業向けのサービスとは費用感が異なります。ここでは、実際の自治体の発注実績をもとに、費用の目安を3つのパターンに分けて紹介します。
FAQ・シナリオ中心の費用相場
定型的な質問にFAQ形式やシナリオ形式で対応するタイプは、自治体の発注実績では初期構築費40万〜170万円程度、月額運用費13万円程度であることがわかりました。
筆者が調査した各自治体の詳細は以下のとおりです。
| 初期費用 | 年間運用費 (運用・保守・使用料など) | |
|---|---|---|
| 茨城県鉾田市 | 上限:165万円 | 792万円(※5年間) |
| 大阪府柏原市 | 上限:38万5,000円 | 上限:198万円 |
ただし、これらの金額は、契約期間や作業範囲が異なる個別の事例です。初年度の予算を検討する際は、構築費に加え、必要な月数分の運用費とデータ整備・研修などの費用を確認しておくことが大切です。
生成AI・自治体サイト全体検索型の費用相場
生成AIを活用した自治体向けチャットボットの費用は、対応範囲や機能、運用期間によって大きく異なります。
たとえば栃木県真岡市が2026年に公募した生成AIチャットボットでは、システムの構築と6ヶ月間の運用保守を合わせた契約限度額が145万5,960円(税込)に設定されています。
一方、大阪府豊中市の子育て世帯向け生成AIチャットボットでは、構築・運用にかかる委託限度額が各年度523万6,000円(税込)です。
このように、生成AIを活用したチャットボットでも費用には幅があります。導入を検討する際は、回答対象となる情報の範囲や必要な機能、運用期間などを踏まえて予算を検討することが大切です。
API・基幹システム連携を伴う場合の費用
電子申請システムや施設予約システム、住民情報を管理する基幹システム、本人確認のための認証基盤などとチャットボットを連携させる場合は、原則として個別見積もりとなります。
連携先のシステムの仕様や、すでに保有しているシステムとの接続方法によって、必要な開発工数が大きく変わってくるためです。数百万円以上の追加費用が発生する可能性もあります。連携内容によって金額差が非常に大きく、一律の相場は示しにくいのが実情です。連携先の仕様書や実現したい機能を整理し、複数の提供事業者へ同じ条件で見積もりを依頼しましょう。
総務省が推進する「Govbot(ガボット)」とは

自治体独自のチャットボットとは別に、国が提供する「Govbot(ガボット)」というチャットボットについて紹介します。
Govbotの概要と特徴
Govbotは、政府が整備した行政分野横断型のチャットボットです。総務省が運営しており、2024年3月に提供が開始されました。マイナンバーや子育て、医療保険、年金、税など幅広いトピックのFAQを搭載し、その数は約1,300問にのぼります。政策分野を横断的に検索できるチャットボットを政府が整備するのは、初の試みとされています。
なお、Govbotの目的は、国・地方に共通する質問へ統一的に回答することです。日本語に加え、機械翻訳で英語、中国語、韓国語など15言語に対応しています。
ただし、複数の言語で質問できる一方で、翻訳結果が正確でない場合があります。正文となる言語は日本語のため、他言語での使用の場合には誤った回答をする可能性があることを含んでおくことが必要です。
Govbotで対応できる行政分野
提供開始当初から住民からの問い合わせニーズが多い、以下のような行政分野を中心にFAQが用意されています。
- マイナンバー
- 子育て
- 医療保険
- 年金
- 税
- 不動産登記
- 戸籍
2024年分の所得税の定額減税や年収の壁対策といった、その時々の制度改正に関する新しいトピックも追加されました。
Govbotが対応する行政分野は、運用開始以降も拡充が続けられています。2025年3月末には以下の分野が新たに搭載されました。
- 防災・災害対応
- 高齢者福祉(介護等)
- マイナ免許証
- 戸籍への振り仮名記載
このように、国民から問い合わせの多い行政分野を中心に、対応範囲を段階的に広げていく方針で運用されているのがGovbotの特徴です。今後も新しい制度や法改正に合わせて、対応分野が追加されていくことが見込まれます。
Govbotと自治体独自のチャットボットの違い
ここで気になるのが、Govbotと各自治体が独自に運用しているチャットボットとの違いではないでしょうか。
神奈川県川崎市の公式サイトでも、両者の違いを説明しています。市のAIチャットボットは市行政の問い合わせに回答し、Govbotは国・地方に共通する質問に統一的に回答する位置づけです。
ごみの収集日や地域の公共施設、自治体独自の助成制度などは、自治体側で回答を整備する情報です。一方、マイナンバー制度や年金、戸籍などに関する共通の質問は、Govbotを補完的に活用できます。同じ制度でも、自治体ごとの申請窓口や提出方法は、地域の情報として案内する必要があります。
新たに導入する際は、Govbotで対応できる質問と、自治体独自に整備する質問を整理すると効率的です。役割分担を明確にすることで、FAQを整備する範囲を検討しやすくなります。
自治体チャットボットの導入事例4選

ここでは、実際にチャットボットを導入している自治体の事例を4つ紹介します。それぞれ異なる特徴を持っているので、自分の自治体に近い規模や課題を持つ事例を参考にしてみてください。
渋谷区:生成AIチャットボットで行政手続きの問い合わせに対応
東京都渋谷区では、2025年3月26日から、生成AIを活用したチャットボットサービスを開始しました。区のWebサイトとFAQをもとに回答を作成し、関連するページも案内する仕組みです。
英語、中国語(簡体・繁体)、フランス語、韓国語にも対応しており、画面右上のプルダウンから利用したい言語を選択できます。なお、ChatGPTの生成AIを活用した機能であることから、13歳未満の利用は推奨されていません。
入力された質問や回答へのフィードバックを分析し、回答精度の向上に取り組んでいます。ただし、入力内容を回答用の学習データとして利用するものではありません。利用者の反応を改善に生かしながら運用している事例です。
参照:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/kocho/ai-chatbot/ai_chatbot.html
福岡県:4分野のFAQ整備と総合案内をAIチャットボットで実現
福岡県では、住民の利便性向上を目的にAIチャットボットを導入しています。以下の4つの分野でFAQを整備し、AIが質問に回答する仕組みです。
- 県税の賦課徴収
- 県立図書館の利用方法
- 教職員免許状
- 建設業許可・入札参加資格申請
さらに特徴的なのが、総合案内としての機能です。具体的な手続き内容に答えるだけでなく、AIが県の業務の担当部署を案内する役割も担っています。どの部署に問い合わせればよいか分からないという住民の悩みに対して、最初の入り口としてチャットボットが機能している事例です。
参照:福岡県庁ホームページ
札幌市:子育て世帯向けAIチャットボットでLINE連携を実現
北海道札幌市では、「さっぽろ子育てAIチャットボット」を提供しています。
妊娠期から子どもの就学前までの子育て支援に関する情報や質問に対して、AIチャットボットが24時間365日、自動で回答するサービスです。専用アプリのインストールは不要で、誰でも無料でパソコンやスマートフォンから利用できます。
「札幌市ひとり親家庭支援」のLINEに友だち登録している場合は、トーク画面のリッチメニューから直接アクセスできる仕組みも備えています。WebとLINEの両方からアクセスできる設計により、住民が普段使っているツールから自然に利用できる点が特徴です。
川崎市:Web・LINEの双方で住民問い合わせを自動化
神奈川県川崎市では、2021年3月1日から、AIを活用したチャットボットシステムを導入しています。主な利用場面は以下の通りです。
- 市役所の業務時間外に問い合わせたいとき
- 電話よりも気軽に問い合わせたいとき
- ホームページでの情報の探し方が分からないとき
- 窓口の混雑状況を知りたいとき
- ごみの分別を調べたいとき
- イベント情報を調べたいとき
インターネット上での利用に加えて、川崎市LINE公式アカウント上でも利用できる点が特徴です。普段使っているLINEから気軽に問い合わせができる環境を整えることで、住民の利便性向上を図っています。
自治体チャットボットの選び方・比較ポイント3つ
サービスを比較する際は、用途に合う機能と利用条件を確認することが大切です。ここでは、選び方を3つのポイントに分けて解説します。
住民向け・職員向けの用途を明確にする
まず整理したいのが、住民向けと職員向けのどちらを主な目的として導入するのかという点です。住民向けでは、Webサイトへの設置に加え、川崎市のようにLINEとの連携を組み合わせる方法があります。
一方、職員向けに導入する場合は、扱う情報の機密性によって接続するネットワークの要件が変わってきます。インターネット接続系で利用するのか、LGWAN接続系で利用するのかを早い段階で整理しておくことで、システム選定がスムーズになるでしょう。
AI型かシナリオ型かを目的に合わせて選ぶ
選択肢をたどる案内にはシナリオ型、自由入力の質問から登録済みの回答を探す用途にはAI型が候補となります。文書の情報を参照し、質問に応じた文章で回答したい場合は生成AI型も選択肢です。対応分野の数だけでなく、住民が質問する方法や回答の管理方法で比較しましょう。
たとえば、特定の手続きについて決まった順序で案内する場合は、シナリオ型のほうが対応しやすくなります。幅広い分野の質問を受ける場合は、自由入力から回答を探せる機能が有用です。実際に寄せられる質問を用いて、必要な案内ができるか確かめてみてください。
多言語対応・既存システム連携の有無を確認する
外国人住民や訪日観光客が多い地域では、必要な言語に対応しているかを確認しましょう。渋谷区のように複数言語で行政手続きを案内できれば、日本語に不慣れな住民も情報を得やすくなります。
LINEとの連携や電子申請ページへの案内、APIによる既存システムとの連携も確認したい項目です。申請ページへリンクする機能と、システム間でデータを連携する機能は異なります。見積もり時に必要な連携範囲を伝え、追加費用の有無も確認しておくと、認識の食い違いを防げます。
自治体チャットボットの導入ステップ7つ

実際に導入を進める際は、どのような順序で検討していけばよいのでしょうか。ここでは7つのステップに分けて解説します。
1. 導入目的・対象業務・KPIを整理する
最初に、導入の目的を整理します。職員の問い合わせ対応の削減や住民満足度の向上など、目的によって優先する機能と評価方法が変わります。
あわせて、対象業務を具体化することも大切です。たとえば「ごみの分別に関する電話問い合わせを減らす」と対象を絞ると、FAQ整備の範囲が明確になります。問い合わせ件数や利用率など、成果を測る指標であるKPIと目標値を設定しておくと、導入後の効果を検証しやすくなります。
2. 利用環境とシステム連携要件を整理する
次に、Webサイトだけで使うか、LINEなどと連携するかを検討します。川崎市のようにWebとLINEの両方で利用できる事例も参考にするとよいでしょう。
電子申請や施設予約など、既存システムとの連携が必要かも検討します。連携の有無や方法によって開発作業と費用が変わるため、早い段階で関係部署と要件をすり合わせておくと、比較がしやすくなります。
3. セキュリティ・個人情報の取り扱いを確認する
個人情報を扱う可能性がある場合は、入力する情報の範囲や、入力情報の保存・利用方法を確認します。職員向けでは、インターネット接続系とLGWAN接続系のどちらで利用するかによっても、確認する要件が異なります。
LGWAN接続系での利用には、LGWAN-ASPへの対応状況や自治体のセキュリティポリシーへの適合の確認が必要です。情報システム部門と連携し、選定前に必要な条件を整理しておきましょう。
4. サービスを比較して実証実験を行う
目的や要件が固まったら、複数の事業者が提供するサービスを比較検討します。導入・運用に必要な範囲で見積もりを取り、機能やサポート体制も確認しましょう。
本格導入の前には、トライアルや実証実験で使い勝手を確かめます。実際に寄せられる質問に対して、正しく回答できるかを確認するためです。小規模な検証で精度や操作性を評価し、本格導入の判断につなげると、導入後のミスマッチを減らせます。
5. FAQ・シナリオ・回答データを整備する
導入が決まったら、住民からよく聞かれる質問と回答、参照する文書を整理したうえで、システムへ登録します。回答のもとになる情報を準備する作業は、まとまった時間が必要です。
複数の部署に関わる質問は、回答内容を確認する担当部署をあらかじめ決めておくと、作業が進めやすくなります。既存のFAQページや過去の問い合わせ履歴があれば、土台として活用することも可能です。
6. 庁内確認を経て公開・利用周知を行う
ゴールではなく、利用を促進するための取り組みの始まりだと捉えておくとよいでしょう。
FAQなどの整備が完了したら、庁内で回答内容や動作を確認し、公開します。公開後は、住民に存在と使い方を知ってもらうための周知も必要です。
たとえば、ホームページの目立つ位置にアイコンを設置したり、広報誌やSNSで利用方法を案内したりします。住民が必要なときに見つけられるよう、利用促進も大切です。公開後には利用されているかの状況を確認のうえ、必要に応じて周知方法を見直していきましょう。
7. ログを分析して回答精度を改善する
運用開始後に確認するのは、質問や回答の記録であるログです。回答できなかった質問や誤った回答を分析し、FAQや参照する情報を更新することで、精度の改善につなげます。
渋谷区でも、質問やフィードバックの分析が回答精度の改善に役立てられています。こうした継続的な改善を見据え、導入時から運用体制を整えておくことが大切です。
チャットボットを活用して住民サービスを向上させよう
自治体向けチャットボットについて、活用用途から費用相場、導入事例まで紹介してきました。最後に、記事全体の要点を振り返ります。
- シナリオ型・AI型・生成AI型で、質問の受け付け方や回答の管理方法が異なる
- 導入により、住民の利便性向上や職員の業務負担削減につながる
- FAQ整備の工数やネットワーク環境による要件の違いがある
- 費用は業務範囲等で異なるため、削減したいコストと予算の照合が必要
- Govbotは国の制度に関する共通質問を担っている
- 課題感の近い自治体を参考にして、自分の自治体に合うかを判断する
チャットボットは、住民の質問を分析し、回答や利用方法を改善し続けることで役立つツールになります。まずは自治体の課題を整理し、どの業務への導入が有効かを検討しましょう。
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