「パスワードを忘れました」「経費精算の締め日はいつですか」など、情報システム部門や総務・人事には、毎日似たような質問が繰り返し寄せられます。一件の対応は数分でも、積み重なれば本来注力すべき業務を圧迫する要因になります。
こうした社内の問い合わせ対応を自動化する手段として広がっているのが、社内チャットボットです。実際に導入した企業では、ヘルプデスクへの入電件数が大きく減少した事例も公開されています。
この記事では、社内チャットボットについて以下の内容を解説します。
- 社内チャットボットの仕組みと、社外向けチャットボットとの違い
- 部門別の活用シーンと、自動化しやすい問い合わせ・しにくい問い合わせ
- 導入企業の具体的な効果と、よくある失敗の回避方法
- 選び方のポイントと費用の考え方、導入手順
社内の問い合わせ対応に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
社内チャットボットとは?

社内チャットボットは、従業員から寄せられる質問に自動で回答する仕組みです。情報システム部門や総務・人事に集中しがちな問い合わせを肩代わりし、担当者の負担を軽減します。
まずは基本的な仕組みと、混同されやすい他のツールとの違いから整理していきましょう。
従業員からの問い合わせに自動回答する仕組み
社内チャットボットは、従業員が入力した質問に対して、あらかじめ登録された回答や社内文書をもとに自動応答するシステムです。
対応できるのは、パスワードの再設定手順、経費精算のルール、有給休暇の申請方法といった、繰り返し発生する定型的な質問です。従業員はチャット画面に質問を入力するだけで、担当者を待たずに回答を得られます。
設置場所は、社内ポータルサイトやグループウェア、TeamsやSlackといったビジネスチャットツールが一般的です。従業員が普段から使っている場所に設置することで、利用しやすい導線を作れます。
社外向けチャットボットとの違い
同じチャットボットでも、社内向けと社外向けでは目的も設計も異なります。主な違いは次の4点です。
| 比較項目 | 社内向けチャットボット | 社外向けチャットボット |
|---|---|---|
| 利用者 | 自社の従業員 | 顧客・見込み顧客 |
| 質問内容 | 就業規則、社内システムの操作、各種申請手続きなど内部情報 | 製品仕様、価格、購入方法などの顧客サポート |
| テンプレート | 社内問い合わせ向けのテンプレートを搭載した製品が多い | 顧客対応向けのテンプレートが中心 |
| 主な連携先 | 社内ポータル、グループウェア、Teams・Slack | Webサイト、CRM、メール配信システム |
社内向けチャットボットでは、社外に出せない内部情報を扱う点が大きな違いです。そのため、アクセス権限の管理やデータの保管場所といったセキュリティ要件が、社外向け以上に重要になります。
社内ヘルプデスクやFAQシステムとの違い
社内チャットボットと近い役割を持つ言葉に、「社内ヘルプデスク」と「FAQシステム」があります。
社内ヘルプデスクは、従業員からのIT関連の問い合わせに対応する業務や部署を指します。
社内チャットボットは、そのヘルプデスク業務を効率化する手段のひとつです。
FAQシステムは利用者が自分で情報を検索するのに対し、チャットボットは質問を入力すると回答が返る対話形式です。検索方法がわからない場合でも、必要な情報にたどり着きやすい点がチャットボットの特徴です。
なお、「AIヘルプデスク」と呼ばれるサービスもあります。機能はサービスによって異なるため、名称ではなく、自社の問い合わせ内容に対応できるかどうかで判断しましょう。
チャットボットとFAQシステムの違いや、両者を連携させる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

社内ヘルプデスクにチャットボットが求められる理由

社内チャットボットの導入が広がっている背景には、ヘルプデスク業務が抱える構造的な課題があります。ここでは、多くの企業に共通する4つの課題を見ていきます。
同じ質問への回答が繰り返し発生している
従業員がつまずくポイントは似通っているため、ヘルプデスクには同じような質問が何度も寄せられます。
実際、NTT東日本がヘルプデスクへの問い合わせ内容を分析したところ、件数の60%は社内Webサイトの参照などで解決できる「単純な質問」でした。
同社では社内WebサイトにFAQを掲載していたものの、そもそも社内Webサイトの認知が低く、ほとんどが電話での問い合わせという状況だったといいます。
出典:NTTドコモソリューションズ「NTT東日本 導入事例」
FAQを用意しても、従業員がその存在や場所を知らなければ、問い合わせの削減にはつながりません。
問い合わせ対応によって本来の業務が中断される
システム改善や社内DXの推進といった業務とヘルプデスクを兼任している場合、問い合わせのたびに本来の作業が中断されます。
株式会社大京では、ITヘルプデスクへの問い合わせ内容を確認した結果、全体の約30%がQAサイトを確認すれば解決できる内容だったことがわかりました。
本来なら自己解決できたはずの問い合わせに、担当者の時間が費やされていたことになります。
担当者によって回答内容や品質が異なる
対応履歴やマニュアルが整備されていないと、同じ質問でも担当者によって回答が変わることがあります。
回答にばらつきがあると、従業員は「誰に聞くかで答えが変わる」と感じ、ヘルプデスクへの信頼が損なわれます。誤った案内が伝われば、手続きのやり直しなどの手戻りも発生しかねません。
社内ナレッジが分散・属人化している
対応ノウハウが特定の担当者の頭の中にしかない状態では、その人が不在のときに問い合わせが滞ります。引き継ぎも難航し、新任担当者の育成にも時間がかかるでしょう。
また、社内にドキュメントが存在していても、保存場所がわからず活用されていないケースは珍しくありません。
大京の事例でも、以前はヘルプデスクから教えてもらったドキュメントを探す作業が面倒だったという利用者の声が紹介されています。
こうした問い合わせ対応の負担やナレッジの分散を解消する手段として、社内チャットボットが注目されています。
社内チャットボットでできること

社内チャットボットは、単に質問へ回答するだけのツールではありません。問い合わせの受付から担当者への引き継ぎ、蓄積したデータの活用まで、幅広い役割を担えます。
主にできることは、次のとおりです。
- よくある問い合わせに自動回答する
パスワードの再設定手順や経費精算のルールなど、繰り返し発生する質問に24時間対応できます - 社内規程やマニュアルから必要な情報を案内する
該当するドキュメントのURLを提示することで、従業員が資料を探す手間を省けます - 申請フォームや担当部署へ誘導する
質問内容に応じて、適切な申請窓口や担当部署へ案内し、たらい回しを防ぎます - 解決できない問い合わせを担当者へ引き継ぐ
自動回答で解決しない場合は、問い合わせフォームの表示や有人チャットへの切り替えを行います - 問い合わせログからFAQや業務上の課題を把握する
どんな質問が多いか、どこで解決できていないかが可視化され、FAQの改善やマニュアル整備に活かせます
このように、社内チャットボットを活用することで、問い合わせ対応の効率化だけでなく、社内情報を活用しやすい環境づくりにもつながります。
部門別に見る社内チャットボットの活用シーン

社内チャットボットの活用先は、情報システム部門だけではありません。従業員からの問い合わせを受ける部門であれば、幅広く導入効果が見込めます。ここでは代表的な5つのシーンを紹介します。
情報システム部門|ITヘルプデスクの一次対応
情報システム部門のヘルプデスク業務は、社内チャットボットの代表的な活用先です。
パスワードの再設定、VPN接続の手順、システムへのログイン方法、PCの不具合といった問い合わせが対象になります。
なかでもパスワード関連の問い合わせは、繰り返し発生しやすいもののひとつです。
NTT東日本では「パスワードロック解除」の操作が月に700〜800件、年間では8,000〜9,000件ほど発生し、常に1名がこの業務にかかりきりとなる状況だったといいます。
人事・労務部門|勤怠や年末調整、入退社手続きの質問対応
有給休暇の申請方法、勤怠の打刻修正、年末調整の提出期限など、人事・労務に関する問い合わせも自動化しやすい領域です。
年末調整や入社シーズンのように、特定の時期に問い合わせが集中する業務ほど効果を実感しやすいでしょう。担当者が同じ説明を繰り返す手間を大きく減らせます。
総務・経理部門|経費精算や備品申請、社内規程の案内
備品の購入手順、経費精算の締め日、慶弔規程の確認といった総務・経理への問い合わせにも活用できます。
大京では、ITヘルプデスク用に続いて2つ目のチャットボットとして人事総務問い合わせ用を構築しました。
「封筒を買いたいときどうすればいい?」「名刺がほしいんだけど」といった、物品や消耗品を購入するときの問い合わせに対応しています。
営業・現場部門|商品情報や申請フローの確認
営業担当者からの商品仕様の確認や、店舗・工場から本部への問い合わせにも応用できます。
拠点が分散している企業では、本部への確認に時間がかかり、現場の判断が滞ることがあります。チャットボットを設置すれば、拠点や時間帯を問わず同じ情報にアクセスできる環境を整えられます。
新人教育|入社時に必要な情報の案内
入社直後は、業務の進め方から社内ルールまで質問が集中する時期です。しかし新入社員にとっては、些細なことを何度も聞きづらいという心理的なハードルもあります。
NTT東日本では、業務の知識やノウハウを体系的にまとめることで、新しく業務に携わる人が自ら調べて学べる仕組みとしても活用できるとしています。教育担当者の負担軽減にもつながる使い方です。
社内チャットボットを導入する5つのメリット

社内チャットボットの導入で得られる効果は、問い合わせ件数の削減だけではありません。ここでは主なメリットを5つに整理して解説します。
問い合わせ対応の工数を削減できる
定型的な質問をチャットボットに任せることで、担当者は複雑な問題解決に集中できるようになります。
NTT東日本では、ヘルプデスクBOTの導入後、電話による「単純な質問」が月約160件から43件へと、約73%減少しました。
従業員が必要な情報をすぐに確認できる
質問した従業員にとっても、回答を待つ時間が減るメリットがあります。
担当者からの返信を待つ間、作業が止まってしまうことは少なくありません。
さらに、人に聞きにくい質問でも気兼ねなく尋ねられる点もメリットの一つです。
大京では、入電件数が30%減少した一方で、これまで聞けずにいた人がチャットボットを通じて質問できるようになった点も成果として捉えています。
時間や場所を問わず問い合わせに対応できる
有人のヘルプデスクでは、対応できる時間や人数に限りがあります。
大京の場合、対応時間は平日9時〜18時で、対応人数は繁忙期などを除き基本的には2人体制で、従業員約6,000人の問い合わせに対応していました。土日祝日は1名のみの体制です。
チャットボットであれば、曜日や時間帯にかかわらず即座に回答を返せます。リモートワークや時差のある拠点を持つ企業でも、時間帯を問わず問い合わせに対応できます。
回答内容と対応品質を統一できる
チャットボットは登録された情報にもとづいて回答するため、誰が質問しても同じ答えが返ってきます。担当者による解釈の差や説明のばらつきが生じません。
回答内容を統一することで、担当者ごとの案内のばらつきを抑えられます。
問い合わせデータを業務改善に活用できる
チャットボットには、質問の内容や回答できたかどうかのログが蓄積されます。このデータを分析すれば、どの業務でつまずく人が多いのかが見えてきます。
大京では「利用数」「回答表示率」「正答率」という3つの指標で回答精度の推移を数値で確認できるダッシュボード機能を活用し、投資対効果の可視化に取り組んでいます。
問い合わせ対応の自動化にとどまらず、マニュアルや業務フローそのものの改善につなげられる点が、データ活用の価値といえます。
チャットボットで対応しやすい問い合わせ・しにくい問い合わせ

社内チャットボットはあらゆる問い合わせに対応できるわけではありません。すべてを自動化しようとすると、かえって従業員の不満につながる可能性があります。
導入前に、自動化する範囲と有人対応に残す範囲を切り分けておくことが重要です。対応しやすい問い合わせと対応しにくい問い合わせの特徴・具体例は、以下のとおりです。
対応しやすい問い合わせ
| 特徴 | 具体例 |
|---|---|
| 回答が一意に決まる定型的な質問 | パスワードの再設定手順、経費精算の締め日、有給休暇の申請方法、備品の購入手順、就業規則の確認 |
| 参照先が明確な質問 | マニュアルの保管場所、申請フォームのURL、担当部署の連絡先 |
対応しにくい問い合わせ
| 特徴 | 具体例 |
|---|---|
| 個別の状況確認が必要な質問 | 「私のケースで経費申請は通るか」といった個別判断、契約内容に依存する質問 |
| 原因の切り分けが必要なトラブル | 特定端末でのみ発生する不具合、複数要因が絡むシステム障害 |
| 機密性の高い内容 | 給与・評価に関する個別の相談、ハラスメントの申告 |
チャットボットで解決できなかった場合の受け皿がないと、従業員に「使えないツール」と感じられる可能性があります。
自動回答で解決しない場合は問い合わせフォームを表示する、有人チャットに切り替えるなど、次のアクションにつながる導線を設けることが重要です。
大京では、件数が多く個別のヒアリングが不要な109個の回答に絞って運用を開始しました。対象を絞ったことが、導入成功の第一歩になったと振り返っています。
社内チャットボットによるヘルプデスク改善の導入事例

実際に社内チャットボットを導入した企業では、どのような効果が出ているのでしょうか。ここでは、社内ヘルプデスクや問い合わせ対応を効率化した3社の事例を紹介します。
ヘルプデスクへの入電件数を約30%削減|株式会社大京
大京では、2017年7月にAIチャットボット「HiTTO」を全社公開し、ITヘルプデスクへの入電件数を約30%削減しました。
導入前は毎月約1,500件の入電があり、初期の学習データとして109個の回答と2,589行の質問パターンを作成。
類似する質問を同じ回答にまとめるなどの改善を重ね、全社公開後は「回答表示率」と「正答率」も約80%を維持しています。
ヘルプデスクへの単純な問い合わせの電話を約73%削減|東日本電信電話株式会社
NTT東日本では、「ヘルプデスクBOT」の導入後、電話による「単純な質問」を月約160件から43件へと約73%削減しました。
導入前は、問い合わせの60%が社内Webサイトの参照などで解決できる「単純な質問」でした。
さらに、2019年11月には「RPAセキュア連携オプション」を導入し、パスワードロック解除の受付から処理までを自動化。関連する電話問い合わせもほぼゼロまで削減しています。
出典:NTTドコモソリューションズ「東日本電信電話株式会社 導入事例」
社内ヘルプデスクの基幹システム問い合わせを約50%削減|佐川グローバルロジスティクス株式会社
佐川グローバルロジスティクスでは、「RICOH Chatbot Service」の導入により、IT企画部への基幹システム関連の問い合わせを月約100件から約50件へと半減しました。
導入前は、本社部門に人事・経理・基幹システム関連などの問い合わせが集中し、担当者不在時に即答できないことや、回答品質のばらつきが課題となっていました。そこで、まず基幹システム関連の問い合わせからチャットボットを導入し、その後対応範囲を拡大しています。
導入後は、チャットボットへの問い合わせが直近3か月で月平均約1,600件となり、満足度も3か月平均73%を記録しています。
出典:リコー「佐川グローバルロジスティクス株式会社 導入事例」
社内チャットボットでよくある失敗と対策

導入すれば自動的に効果が出るわけではありません。実際には「導入したものの使われない」というケースが少なくありません。
ここでは典型的な失敗パターンと、その回避方法を解説します。
FAQや参照情報が不足して回答できない
FAQや学習データが不足していると、質問に答えられず利用されにくくなる可能性があります。
一方で、似た質問を別々の回答に紐づけるなど、データを増やしすぎると回答精度が下がることもあります。
対策としては、既存のマニュアルや問い合わせ履歴を元データとして活用し、回答を細かく分けすぎないよう整理するのが大事です。似た質問は同じ回答に導く設計にすることで、精度が安定します。
対応範囲が伝わらず「使えない」と判断される
対応できる内容を伝えずに公開すると、範囲外の質問に答えられず、「使えないチャットボット」と判断される可能性があります。
大京でも、他部門への公開後に対応範囲外の質問が増え、「適した回答が表示されない=使えないチャットボット」と受け取られるリスクがあったと振り返っています。
公開時には、「何について自動応答するチャットボットなのか」を明確にして周知することが重要です。対応できる範囲をあらかじめ伝えておけば、期待とのずれを防ぎやすくなります。
設置しただけで社員に利用されない
チャットボットを設置しても、存在が十分に知られていなければ利用は広がりません。
大京では、社内イントラでチャットボットの導入を周知し、トップ画面に「チャットで質問」というバナーを設置しました。
その結果、公開翌月の8月は265件、9月は314件、10月は354件と、質問件数が月を追うごとに増加しました。
利用を定着させるには、周知だけでなく、従業員がアクセスしやすい場所に入口を設けることが重要です。
更新担当者が決まっておらず情報が古くなる
社内規程やシステムの変更に合わせて更新しなければ、古い情報を案内するおそれがあります。
情報を最新に保つには、導入前に運用体制を決めておく必要があります。大京では全社公開から3ヶ月が経過した後、学習データのチューニングに費やす時間を大幅に削減し、週に5時間程度を担当者3名の持ち回りで実施する体制を敷いています。
有人対応への切り替え方法が整備されていない
自動回答で解決できなかったとき、次の問い合わせ先がわからなければ、従業員が電話やメールで改めて問い合わせる可能性があります。
解決しなかった場合に問い合わせフォームを表示する、有人チャットに切り替えるといった導線を用意しておくことが大切です。チャットボットと人の役割を明確に分けることで、双方の強みを活かせます。
失敗しない社内チャットボットの選び方のポイント

製品によって得意分野は大きく異なります。前章の失敗を避けるためにも、選定段階で次の6点を確認しておきましょう。
想定する問い合わせに対応できるか
自社に寄せられる問い合わせの性質を把握することが、製品選びの出発点です。
選択肢を提示して案内する形式が適しているのか、曖昧な表現の質問にも対応する必要があるのかを確認しましょう。問い合わせの傾向によって、適した製品は異なります。
社内文書や既存のFAQを活用できるか
すでにマニュアルやFAQが整備されている場合、それらを取り込めるかどうかで導入工数が大きく変わります。
大京ではITヘルプデスクの問い合わせ履歴を、佐川グローバルロジスティクスでは蓄積した問い合わせ内容をFAQ化して活用しました。既存のマニュアルやFAQを取り込める製品を選ぶことで、導入準備の負担を抑えられます。
TeamsやSlackなど普段のツールから利用できるか
高性能なツールでも、利用するたびに専用サイトを開く必要があると、社内に定着しにくくなります。
TeamsやSlack、LINE WORKS、グループウェア、社内ポータルなど、従業員が日常的に利用するツールからアクセスできるかを確認することが重要です。
権限管理やセキュリティ要件を満たしているか
社内チャットボットが扱うのは、社外に出せない内部情報です。
役職や部署に応じた回答の出し分け、退職者のアクセス制限、データの保管場所などが、自社のセキュリティポリシーに適合しているかを確認する必要があります。セキュリティ要件は導入後に変更しにくいため、選定段階で確認しておくことが重要です。
担当者が回答内容やFAQを更新しやすいか
管理画面が使いにくいと、回答内容やFAQの更新が負担になり、継続的な運用が難しくなる可能性があります。
大京では管理画面の使いやすさが、HiTTO採用の理由のひとつでした。
佐川グローバルロジスティクスでも、質問と回答を簡単に登録できる運用のしやすさが製品選定の決め手となっています。
利用状況や未解決の質問を分析できるか
改善を続けるには、利用状況を数値で把握することが重要です。
利用件数や回答できた割合、未解決の質問などを確認できる分析機能があるかを確認します。利用状況を把握できれば、FAQや回答内容の改善につなげられます。
社内チャットボットの費用の考え方

社内チャットボットの費用は、製品や利用規模によって大きく異なります。「相場はいくら」と一律に示せる性質のものではありません。
費用を比較する際は、金額だけでなく、何に費用がかかるのかを確認することが重要です。
ここでは、費用がどう決まるのかを整理します。
費用は「初期費用+月額費用」の二層構造
社内チャットボットの費用は、導入時にかかる初期費用と、継続的に発生する月額費用に分かれます。
初期費用には、アカウント発行や初期設定、FAQ作成の代行費用などが含まれます。初期費用を無料としている製品もありますが、その分が月額費用に上乗せされている場合もあるため、総額での比較が必要です。
見積もりを取る際は、契約期間全体でいくらかかるのかを確認しましょう。年間契約と月間契約で月額が変わる製品も少なくありません。
月額費用を左右する5つの要素
月額費用は、主に次の要素の組み合わせで決まります。
| 要素 | 費用への影響 |
|---|---|
| アカウント(ID)数 | 管理者・利用者のアカウント数に応じて料金が変わる場合がある |
| チャットボットのタイプ | AI・生成AIの有無や機能範囲によって料金が変わる |
| FAQ作成・設定の代行 | 自社で作成するか、ベンダーに依頼するかで大きく変わる |
| 外部ツールとの連携 | TeamsやSlack、社内システムとの連携がオプション扱いの場合がある |
| 設置するサイト・拠点数 | 複数の社内サイトに設置する場合、追加費用が発生することがある |
安価なプランを選んだつもりでも、必要な機能がオプション扱いで結果的に費用が膨らむケースは珍しくありません。
自社に必要な機能を洗い出したうえで、その構成での総額を見積もってもらうことが、比較の前提になります。
クラウド型とオンプレミス型のコスト構造の違い
提供形態によっても、費用のかかり方は変わります。
| 比較項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 抑えやすい | 高額になりやすい |
| 月額費用 | 継続的に発生する | 保守費用が中心 |
| 導入までの期間 | 短い | 長くなりやすい |
| セキュリティ対応 | 提供事業者の基準に依存する | 自社の要件に合わせやすい |
自社のセキュリティポリシーで外部保管が認められない場合はオンプレミス型が選択肢になります。
大京では、社内でAIチャットボットを一から構築する場合のコストや導入負担を踏まえ、既製品のHiTTOを採用しました。自社開発と既製品の導入では、初期コストだけでなく運用負荷も大きく異なります。
社内チャットボットを導入する手順

社内チャットボットは、導入して終わりではありません。ここでは、実際の導入事例に沿った6つのステップを紹介します。
問い合わせ内容と対応工数を把握する
最初に行うべきは現状の把握です。どんな問い合わせが、どれくらいの頻度で寄せられているのかを整理します。
NTT東日本でも問い合わせ内容を分析し、「単純な質問」が60%を占めることを把握したうえで導入を進めています。
導入目的と自動化する範囲を決める
次に、何をどこまで自動化するのかを決めます。すべての問い合わせを対象にせず、頻度が高く回答を定型化しやすいものから始めると、導入しやすくなります。
大京では、件数が多く個別のヒアリングが不要な109個の回答に絞って運用を開始しました。対象範囲を限定することで、導入時の負担を抑えられます。
FAQや社内文書を整理する
自動化の対象が決まったら、回答の元になる情報を集めます。既存のマニュアル、社内FAQ、過去の問い合わせ履歴が主な材料です。
大京では初回の学習データを4人で分担し、約1ヶ月で質問と回答を作成しました。その後、1つの回答に対して10〜15個の質問パターンを増やす際には、ヘルプデスクを担当する部署の28人で分担して作成しています。
同じことを尋ねる言い回しは人によって異なるため、質問パターンを複数用意しておくことが精度向上につながります。
一部の部門で試験導入する
いきなり全社公開せず、限られた範囲で試すことでリスクを抑えられます。
大京では担当部署の28人から試験導入を始め、質問履歴をもとに回答内容を調整しました。佐川グローバルロジスティクスでも、基幹システム関連の問い合わせからトライアルを開始し、その後対応範囲を広げています。
社内へ周知して利用を促す
公開時は、チャットボットの存在と対応範囲の両方を伝えることが重要です。全社メールや社内ポータル、部門ごとの説明など、複数の手段を組み合わせると周知しやすくなります。
「何に答えられるチャットボットなのか」を明示することで、対応範囲への誤解を防ぎやすくなります。
利用ログをもとに回答内容を改善する
運用開始後は、質問ログを見ながら改善を続けます。満足度の低い回答や、誤解を招いて解決に至らなかった質問を洗い出し、回答内容を修正していきます。
こうした改善を怠ると、従業員のチャットボット離れが起き、せっかく導入しても業務負荷が下がりません。導入はゴールではなくスタートであるという認識を持ち、継続的に手を入れる体制を維持することが、成果を左右します。
社内チャットボットの効果測定で見るべき指標

改善を続けるには、効果を数値で把握する必要があります。ここでは押さえておきたい5つの指標を紹介します。
チャットボットの利用数
まず確認すべきは、そもそも使われているかどうかです。利用数が伸びていなければ、周知や導線に問題があると考えられます。
公開直後から件数が右肩上がりに増えていれば、社内に浸透しているサインです。逆に頭打ちであれば、設置場所の見直しや再告知を検討します。
自動回答率・自己解決率
質問に対して回答を返せた割合と、それによって解決に至った割合です。
大京では「利用数」「回答表示率」「正答率」という3つの指標で精度の推移を確認し、回答表示率と正答率は約80%を維持しています。
すべての質問に完璧に答えることは困難なため、現実的な目標値を設定することが大切です。
未回答率・有人対応への切り替え率
回答できなかった質問は、FAQ拡充の手がかりになります。
有人対応に切り替わった件数と内容を確認すれば、自動化できる余地がまだ残っているのか、それとも人が対応すべき領域なのかを判断できます。
問い合わせ件数と対応時間の削減量
導入前後で、担当者に直接寄せられる問い合わせがどれだけ減ったかを比較します。
NTT東日本が電話による単純な質問を月約160件から月43件へと減らした例のように、削減量は導入効果を示す最もわかりやすい指標です。稟議や社内報告の場でも説得力を持ちます。
従業員の満足度
利用件数だけでなく、従業員が回答に満足しているかも確認することが重要です。回答が役に立ったかどうかの評価機能や、定期的なアンケートで確認します。
佐川グローバルロジスティクスでは満足度を3ヶ月平均73%と数値化し、目標を80%に設定して改善を続けています。大京でも、ヘルプデスクに問い合わせるよりも気軽で聞きやすいといった利用者の反応が寄せられています。
件数の削減だけでなく、従業員の体験がどう変わったかまで含めて評価しましょう。
社内チャットボットでヘルプデスク業務を効率化しよう

社内チャットボットは、情報システム部門や総務・人事に集中する問い合わせを自動化し、担当者が本来の業務に集中できる環境をつくる仕組みです。
本記事の要点をまとめます。
- 社内チャットボットは定型的な問い合わせを自動化し、担当者の負担を軽減できる
- 導入企業では、問い合わせ件数を大きく削減した事例がある
- 個別判断が必要な質問は、有人対応へ切り替えることが重要
- 対応範囲の周知と、継続的に更新できる運用体制が必要
- 費用は必要な機能やオプションを含めた総額で比較する
導入して終わりにせず、利用ログをもとに回答を改善し続けることが、効果を持続させる鍵になります。まずは自社に寄せられている問い合わせの内容と件数を把握するところから始めてみてください。
社内の問い合わせ対応の自動化はエルサイトにお任せ

ここまで社内向けの問い合わせ対応について解説してきましたが、Webサイトを訪れる顧客への対応でも、繰り返しの問い合わせや営業時間外の対応が課題になることがあります。
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